リンパ管静脈吻合術(LVA)を受けたJINさんのレポートです。

〈病歴〉

・2011年3月 子宮体がん告知 当初の診断・3期a
・2011年10月 国立がんセンターにて手術 術後の診断・1期c
 (抗がん剤・放射線治療、共に無し)
・現在6ヵ月に一度、経過観察中
        
●リンパ浮腫を発症するまで●

私がリンパ浮腫を発症したのは術後3年目の2014年1月でした。ガン手術のすぐ後、主治医からは「右の鼠径部にリンパ嚢胞はあるものの、脚に適度な筋肉もついているしリンパ浮腫はあまり心配しなくて良いでしょう」と言われ、その言葉を鵜呑みにしてリンパ浮腫の事はあまり気にかけず生活していました。

しかし2013年11月から右脚全体に皮膚のすぐ下で起こるような痛みを覚え、1ヶ月ほどで痛みがおさまった後、お風呂上がりに右足の甲が浮腫んでいる事に気がつきました。そして浮腫が段々と引きにくくなり押すと戻らない状態に。リンパ浮腫を発症したのだと自覚せざるを得ませんでした。自分の足の甲を見て泣き、落胆した気持ちは何とも言えないものでした。

発症後すぐに弾性ストッキングを履きましたがそれが自分に合ったものかどうか分からず、インターネットで必死にリンパ浮腫について調べました。しかしガンが人の数だけ症例があるようにリンパ浮腫に関しても情報が錯綜しており、どれが正しくどれが間違った情報なのか見れば見るほど頭が混乱していきました。

また新宿のリンパ浮腫治療院などにも行きましたがそこでは自分の症状は改善出来そうになかった為、メドマーという空気圧のマッサージを購入して使用したりしました。しかしそれでも毎日毎日、不安感に苛まれ悩み疲れた私は4月によつばの会の
「お悩み相談室」に助けを求めました。そこで出会ったのが会員のgankoさんでした。

gankoさんはご自身もリンパ浮腫を発症しており、ご自分が得た知識をフルに
使ってとても丁寧にアドバイスをして下さいました。そのやり取りの中で教えて頂いた東神奈川のリンパ浮腫専門治療院を訪ね、治療師の先生からリンパ浮腫が進行性のものである事、理学療法だけでなく外科療法との組み合わせで得られる治療効果、現在のリンパの流れやリンパ管の状態を正確に知るための「リンパシンチ検査」の重要性を教えて頂きました。

●手術を受けるまで●

「外科療法=リンパ管静脈吻合術(LVA)」の話を聞いてそのメリットとデメリット
について調べ、gankoさんからもお話をたくさん伺いました。そして6月に横浜
市立大学附属病院でリンパシンチ検査の予約をし、8月に受ける事になりました。た
だこの時点で私自身はすでに手術を受ける方へ大きく気持ちが傾いていました。(gankoさんは7月に手術を受けられました)

9月の検査結果で私のリンパ浮腫のレベルは「2に近い1」という事でした。横浜市立
大学附属病院ではリンパ浮腫をガンの様に浮腫の度合いで1〜4までクラス判定しているそうです。私は結果を聞いてその場で手術を決断しました。決断の理由は、自分が罹患する前年に肺がんで亡くなった父が形見として残していった大型犬の世話をしなければならない事、この先もし母親の介護が必要になった場合その介護をするのは自分しかいないという、二つの理由からでした。

この手術は通常、全身麻酔で行うそうですが順番待ちの患者さんが大勢居て、平均
10ヵ月から場合によっては1年以上待たなければなりません。その為、横浜市立大学
附属病院の先生は部分麻酔で手術を行う事で1回の吻合箇所が少ない代わりに、より多くの患者さんが手術を受けられるよう工夫されているそうです。私は12月に部分麻酔で右膝下の手術を受ける事にしました。

●手術当日と術後のケア●

そして入院の日がやって来ました。入院は下肢の部分麻酔の手術で3泊4日で上肢の場合は2泊3日が通常の日数の様です。写真にもある様に足の指の付け根に造影剤を注射します。(青くなっているのがそうです)その流れに沿って下絵を描きリンパ液の流れを確認して先生が手術の場所を特定、手術スタートです。

私の場合、今回はひざ下の足首近くを2箇所吻合しました。手術時間は2時間でしたが3時間かかる場合もあるようです。またどこを吻合するかはリンパ液の溜まり方や流れで人それぞれ違うそうです。術後は安静にし、gankoさんのアドバイスもありトイレ以外は出来るだけ足を下ろさない様に注意しました。術直後は足の指にくびれが出来て甲もこころなしかスッキリしています。写っている角度は悪いですが6月に撮った写真と比べると角度は違えど足の色や浮腫み具合から、その差は歴然だと思います。

●抜糸後&1ヶ月●

2015年1月。術後初の診察を受けました。計測では術前より全体的に5ミリから1セ
ンチ細くなっているとの事でした。これは嬉しい結果です。ただ、手術をした足の甲は以前よりスッキリしたものの今度はくるぶしやスネに浮腫が出る様になりました。
執刀医の先生曰く「どうしても流れが弱いところに溜まるんだねぇ・・・ストッキングを履きながら次の手術まで悪化させない様にしよう。」と言われました。私の場合は一度にたくさんのリンパ管を吻合出来る全身麻酔ではないため顕著な結果が出なかったのかも知れません。

別の場所に浮腫が出たのは予想外で正直ショックでしたが足の甲は靴に影響するのでここがスッキリしただけでも有難い事で、ストッキングなど悪化防止のアイテムをフル活用する事で前向きにいくしかない!と思いました。手術していてもしていなくても、「要するにいかに悪化防止に努めるか」なんですよね。

◎最後に私が使用している悪化防止のパートナー達についてお伝えしますね。

・ストッキングは東神奈川の治療院でオーダーしました。
正直、相当な圧迫力ですが自分の寸法に合っているせいか不快な感じはありません。リンパ浮腫は自分の脚に合ったストッキングを履く事が悪化防止にはとても大切なのだそうです。

・メドマーはリンパ浮腫に関しては治療院や医師によって使ったほうが良い、悪いが真っ二つに分かれているのが現状です。
これはもう誰のどの意見を信頼し、取り入れるかだと思います。ただこのマッサージ機は治療の現場で実際に使用されている物だそうです。私は現在毎日ではなく1日から2日おきに使用しています。

・夜、治療院で作ってもらったウレタンを脚に巻いて寝ています。
これを装着すると翌朝の浮腫の引き方が違います。ウレタンに限らず就寝時、体を横にしている時に浮腫軽減の対策を講じる事も大切だと思います。

・大型犬を飼っているので雨の日以外は否応なく朝夕散歩しています。
時間にして1時間強でしょうか。筋肉運動はリンパ液を上半身に戻すため、とても大
切なんだそうです。ただしやり過ぎは逆効果です。


今回、私が自分のリンパ浮腫や手術の事をHPに公開しようと思った理由は、自分がgankoさんとよつばの会に助けてもらった事を少しでも多くの会員さんに情報としてお返ししたいという思いからでした。

すでにリンパ浮腫を発症して、私よりもっともっと辛い思いや大変な思いをしている会員さんもたくさんいらっしゃると思います。その方達にはもしかしたら私の文章の中に目新しい事は見つけられないかも知れません。でもまだ発症しているかどうかも自覚出来ていない方や、発症したばかりで今後どう向き合っていこうか悩んでいる方もいるのではないかと思いました。

ガンの治療にも様々な選択肢があるように、リンパ浮腫との向き合い方も同じように人それぞれの選択肢があります。そして何を選ぶかはもちろん自分自身が決める事です。私もその選択肢としてまだまだエビデンスの少ない外科療法を選ぶ事は迷いもありましたが、改善の可能性を求め手術を受けました。その選択肢の中身を会員さんに知って頂き、少しでも選択肢が広がればと思いました。

皆さんお役に立てたら幸いです。